road to spine

大学院を卒業し、田舎の病院で脊椎内視鏡手術を行っています 脊椎外科医になるために必要な事を備忘録も兼ねて たまに資産形成、英会話などについても

2020年05月

最近某SNSで話題の柔道整復師問題。
やり玉に挙げられているのは下記の3点。
法的なことなど、知識の整理をしてみました。

①骨折の保存加療を最後まで行っていることは違法ではないか?
②関節痛などを整形外科受診無しで(?)治療することによる骨軟部腫瘍の見逃し
③レントゲンを撮って「診断」をつけることは違法ではないか?

①の保存加療については、法律にきちんと書いてあります。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=345AC1000000019

(施術の制限)
第十七条 柔道整復師は、医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。

常識的に保存加療で何週間も治療をし続けるのは応急処置には当たらないと考えられますが、「応急処置」の具体的な期間が記載されていないので、グレーゾーンで行っているものと思われます。医療保険的には初回のみ適応で、以後は自費診療となることが多いようです。

②の骨軟部腫瘍見逃しについては、もちろん特に法的な規制は無いです。膝が痛くてマッサージ屋さんに行って、いきなり医療機関受診を勧めることがないのと一緒で、そこまで整体に期待するのは難しそうです。ただし、骨肉腫などで月単位もしくは週単位のの治療の遅れで悲惨なことになるのは腫瘍治療ではあるあるのようなので、啓蒙活動は必要であると考えられます。

③については、そもそもレントゲン撮影が整体では撮れない(診療放射線技師法第24条にて医師、歯科医、放射線技師しか撮影を認められていない)ので、提携病院で撮影してもらう流れのようです。そこで読影までつけて骨折の診断を医師にしてもらって、応急処置を行う分には①の如く合法と考えられます。

柔道整復師を導入して(ギプスやシーネ固定など)上手くいっている整形外科開業医もあり、上手な関係を持てるようになりたいものですね!
個人的には、術後の患者さんなどで整体やあ・は・き(按摩・鍼・灸)の診断書を頼まれても責任が取れないので、応じていません。診断書を書いて何かあった場合の責任は医師が負うことにもなるからです。
保存治療の勉強が不足しがちなのは否定できないです、日々勉強していこうと思います。
下記の教科書は冒頭の100ページ超が保存加療についてです。保存加療こそが最大の低侵襲。間違いないです。


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術後感染症などで最近話題のiMAP&iSAP。
デバイスを残したまま感染をコントロールする、局所高濃度抗生剤投与。
isapimap



こちらのリンクが分かりやすいです

最近触れる機会がありました。
まだevidenceはこれからの分野。
感染症の経験豊かなベテランも絶賛する治療!!と言われたり、全然ダメ、と言われたり、、

一つの要因としては、専用のキットがないことによるPitfallの多さにあると感じました。
特に術後最初の数日が肝要。詰まったりアラームが鳴ったり、、
資料だけみて始めても、ほぼ確実にdrop outするといっていいほどです。
導入するのであれば経験者医師に来てもらってやってもらうのが一番確実です。
ですが、これからの軟部組織・骨髄炎感染症に対する加療の大きな武器になる可能性を秘めている本治療法。
専用キットが待たれるところです。



テリートーマスサイン(Terry-Thomas Sign)、初めて知りました。
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英国生まれのコメディアンの、すきっ歯に似ていることから名付けられた舟状骨の外方脱臼のサインです。
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こういう用語をサラッと使えるようになりたいものです。

時事メディカルより

■舟状-月状離開
 手根骨のうち、舟状骨(しゅうじょうこつ)と月(げつ)状骨との間に障害が出たものです。舟状骨と月状骨間の解離(SL解離)が生じ、X線検査で3mm以上のすきま(Terry-Thomas徴候)がみとめられます。
 進行すると舟状骨周辺の2次性の関節症となり、舟状-大菱形小菱形骨間関節(STT関節)の変形やSLAC(scapho-lunate advanced collapse)wristと呼ばれる状態が生じます。

[治療]
 外傷などによる急性期のSL解離では、靱帯(じんたい)を修復する手術をおこないます。慢性期では、症状が軽ければサポーターなど対症療法をおこないますが、症状が強ければSTT関節固定や手根骨の部分切除、あるいは部分関節固定などの手術をおこないます。





大腿骨骨幹部骨折、特に横骨折の髄内釘加療では回旋変形が残ることがしばしばあります。
1割以上の患者で10度以上の回旋変形を認めるという報告も複数あります。
教科書や文献的には内外旋ともに15度までが許容範囲で、外旋変形が症状が出やすいとされます。
術中に確認する方法としては、下記の三つが有名

・Cortical step sign(内外側の皮質の厚さを同じにする)
css

・Diameter different sign(透視上の直径を同じにする)

dds

・Lesser trochanter sign
健側の小転子の見え方-膝蓋骨の位置の関係と同じように整復
lts

最近ではEspinoza techniqueという、髄内釘の前捻に大腿骨を合わせるという手法もあるようです。
este

できることはやっていこうと思います。



骨粗鬆症加療で避けては通れないビタミンD。
食物由来と、皮膚由来は約半分ずつといわれています。
皮膚由来のビタミンDは日光を浴びることで生成されますが、要注意事項が一つ。
屋内で窓ガラス越しの日光を浴びていても殆ど生成されません。
一般に使用されている窓ガラスは、ビタミンDを合成するUVBをブロックしています。
僕も数年前まで知りませんでした。
一般の方向けの骨粗鬆症財団(国が運営)のホームページにも記載されています。
http://www.jpof.or.jp/prevention/sunbathing/
やはり1日15分でも外を歩くことが重要ですね!運動にもなりますし。
なので入院患者さんや、在宅でも外に出ないADLの方は殆ど窓ガラス越しの日光となりますから、食事や薬物での経口摂取での補充が重要と考えられます。



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