**専門医試験用、ガイドラインの要約をコピペしてまとめただけの記事です

第1章 疫学
CQ 1. アキレス腱断裂の発生数はどのくらいか.また,発生数に経年的変化があるか
●欧米の発生数の報告では人口 10 万人あたり 6.3〜41.0 人と,国あるいは地域で異なっている.
(Grade I)
●発生数は変化しており近年増加傾向にある.(Grade C)
●本邦では発生数についての報告はない.(Grade C)

CQ 2. アキレス腱断裂受傷の好発年齢はどのくらいのか.また,性差,左右差,季節性はあるか
●受傷好発年齢は 30〜40 歳代であり,50 歳以上の年齢層にもうひとつ小さなピークがある.
若年層ではスポーツによる受傷が多いが,高齢層にはスポーツ以外の日常活動中の受傷が多い.
(Grade C)
●男女の発生比率は差がないとするものから,女性 1 に対し男性 6.3 まで様々であり,男性に多い
傾向はあるものの断定し得なかった.また女性は男性より受傷年齢が高い.(Grade I)
●左右差では右 41〜45%に対し左 52〜59%とやや左に多い.(Grade C)
●発生の季節性があるとはいえない.(Grade I)

CQ 3. アキレス腱断裂はスポーツ活動中の受傷が多いのか.また,どのようなスポーツで多く受傷するのか
●アキレス腱断裂をスポーツ活動中に受傷したのは 60〜81%の症例であり,スポーツによる受傷 が多いことが示された.国による競技人口の差異を考慮せずにいえば,球技,ラケット競技での 受傷が多く,種目別にはバドミントン,バレーボール,サッカー,テニスなどの球技およびラケッ ト使用競技での発生頻度が高い.(Grade C)

第2章 病因・病態
CQ 1. アキレス腱断裂の予測因子,危険因子はあるか
●アキレス腱の肥厚は退行性変化の存在を示唆し,かつアキレス腱断裂の予測因子,危険因子にな りうる.(Grade C)
●アキレス腱断裂例には高脂血症が合併することが多い.(Grade C)

CQ 2. アキレス腱断裂の発生には,基盤に必ず腱の変性が存在するか
●アキレス腱断裂は基盤に腱の変性が存在して発生すると考えられる.(Grade B)

CQ 3. アキレス腱断裂を誘発する可能性のある薬物はあるか
● fluoroquinolone や ciprofloxacin などの抗菌薬は,アキレス腱断裂を誘発する可能性が考えら れる.特にステロイドを使用している高齢者への投与は注意を要する.(Grade B)
●ステロイド注射はアキレス腱断裂の危険因子になりうる.(Grade C)

第3章 診断
CQ 1. 医療面接(問診・病歴)だけでアキレス腱断裂の診断は可能か
●問診や病歴単独で,ある程度アキレス腱断裂を予想することは可能であるが,単独で診断を確定 させうる高いエビデンスを示す文献は少ない(Grade I).しかしながら,問診や病歴をしっかり 聴取することは基本であり重要である.

CQ 2. アキレス腱断裂の診断において特徴的な臨床所見はあるか
●受傷時にアキレス腱部に認められる陥凹や gap sign は特徴的な局所所見である.歩行は可能な
場合はあるがつま先立ちは不可能である.
● Simmonds test,Thompson test をはじめ各種徒手検査を要す.アキレス腱 gap 部の触診,
Calf squeeze test,Matles test,Copeland test,O’Brien test の各検査法のうち,2 つ
以上の臨床的検査法でアキレス腱断裂が示唆された場合,診断は確実と考えられる.(Grade C)

CQ 3. アキレス腱断裂の診断で単純X線検査の有用性はあるか
●単純 X 線像でアキレス腱断裂そのものの描出は不可能であるが,特徴的なサインや様々の計測に
よりアキレス腱断裂は示唆される.(Grade B)
●付着部裂離骨折は否定できる.(Grade I)

CQ 4. アキレス腱断裂の診断で超音波検査の有用性はあるか
●アキレス腱の断裂の診断において超音波検査(US)は非侵襲的かつ簡便な検査である.完全断裂
の診断においてその診断率は高い.またアキレス腱周囲の損傷の診断や治療方法の選択,治療の
経過観察において臨床的な有用性がある.(Grade B)

CQ 5. アキレス腱断裂の診断でMRIの有用性はあるか
● MRI 検査はアキレス腱断裂の診断において必須ではないが,より詳細な軟部組織の情報や治療に
おける経時的変化を詳細に把握する場合においては有用な検査である.(Grade B)

CQ 6. アキレス腱断裂と鑑別すべき疾患はあるか.また,その鑑別点は何か
●アキレス腱断裂の鑑別疾患については,鑑別に有用とのエビデンスが得られている臨床所見はな
い.(Grade I)
●しかしながら他疾患の見逃しなども考慮されるため画像検査も含め鑑別をしなければならない.X
線や超音波検査が低侵襲かつ簡便で,足関節周囲疾患の鑑別に有用である.

第4章 治療
CQ 1. 保存療法は手術療法に比較して再断裂率が高いか
●従来の保存療法は手術療法に比較して再断裂率が高い.(Grade A)

CQ 2. 保存療法(キャスト・装具)は有用か
●保存療法はアキレス腱断裂に対する有用な治療法である.(Grade A)

CQ 3. 保存療法において早期運動療法(荷重,可動域訓練)は有用か
●保存療法における早期運動療法は有用である.(Grade A)
●早期運動療法を行うと保存療法と手術療法の再断裂率には差はない.(Grade A)

CQ 4. 経皮的縫合術は有用か
●アキレス腱縫合では,直視下手術と経皮的縫合術による再断裂に差を認めない.(Grade B)
●経皮的縫合術は腓腹神経損傷などの合併症を予防できれば有用な方法である.(Grade B)
●経皮的縫合術は,保存療法と比較して後療法を早く行うことができ,術後早期の筋力低下も少ない.
(Grade B)

CQ 5. 直視下手術において端々縫合術は有用か
●端々縫合術は再断裂率が低く有用である.(Grade A)
●端々縫合術は活動性の高い症例にも有用である.(Grade B)

CQ 6. 直視下手術において初期強度を考慮した縫合術は有用か
●縫合方法の工夫によって初期固定力が向上することで,術後の固定期間を短縮でき,術後早期の
荷重負荷が可能で,再断裂も予防できる.(Grade A)

CQ 7. 直視下手術において補強術の追加は有用か
●推奨しない,否定する根拠がある.(Grade D)

CQ 8. 手術療法後の早期運動療法は有用か
●手術療法の術後の過程において早期運動療法は有用である.(Grade A)
●術後に装具を使用しての早期運動療法は術後キャスト固定群と比較して良好な治療結果が得られ
る.(Grade B)
●早期運動療法群では筋力の低下を予防することができるが,十分な後療法の指導が必要である.
(Grade B)

CQ 9. 新しい治療方法としてplatelet-rich plasma(PRP)療法は有用か
●アキレス腱断裂の治療における platelet-rich plasma(PRP)の効果は論文により結果が異なり,
現時点では PRP 療法は有用であるとはいえない.(Grade I)

第5章 予後・予防・合併症
CQ 1. アキレス腱断裂治療法により再断裂に差があるか
●従来の保存療法は手術療法と比較して再断裂率が高い.(Grade A)
●厳格な管理下で行う保存療法,早期運動療法を行う保存療法と,手術療法の再断裂率に差はない.
(Grade A)
●直視下手術と経皮的縫合術で再断裂率に差があるとするエビデンスはない.(Grade A)

CQ 2. 経皮的縫合術と直視下手術において感染率に差があるか
●経皮的縫合は直視下手術に比べて,感染の合併症の頻度が少ない.(Grade A)

CQ 3. アキレス腱断裂治療後に患側の機能低下は残るか
●アキレス腱断裂治療後の患側に何らかの機能低下が残る.(Grade A)
●トップアスリートでは元のレベルでの競技復帰が困難なことがある.(Grade I)

CQ 4. 治療法により仕事やスポーツ復帰時期に差はあるか
●保存療法に比較して手術療法は仕事復帰時期を早める.(Grade A)
●スポーツ復帰時期についてはスポーツ復帰の評価方法が標準化されていないことから,一定の結
論は見出せない.(Grade I)

CQ 5. アキレス腱皮下断裂を予防する方法はあるか
●アキレス腱皮下断裂を予防する方法で,ウォーミングアップやストレッチングとの関連について
は一定の結論は見出せない.(Grade I)

CQ 6. アキレス腱断裂において治療法の選択(手術療法と保存療法)により深部静脈血栓症の発生頻度は異なるのか
●手術療法例と保存療法例において深部静脈血栓症の発生頻度に差は認められない.(Grade B)

CQ 7. アキレス腱断裂の治療中に生じる深部静脈血栓症の有効な予防法はあるか
 dalteparin の 1 日あたり 5,000 単位の投与は深部静脈血栓症の発生頻度を低下させない. (Grade I) ●アキレス腱断裂で明確なエビデンスを示す論文はないが,キャスト固定を行う場合には発生のリ スクがあるので適切な対策が必要である.(Grade I)