第1章 OPLLの疫学・自然経過
BQ 1. 頚椎OPLLの疫学
●頚椎 OPLL の人種別の発生頻度に差があるとした報告は多く,日本人,東アジア人における発生
頻度は,欧米人と比較して高い.
●頚椎 OPLL は男性に多く,胸椎 OPLL は女性に多い.
●頚椎 OPLL は中年(50 歳前後)で発症することが多い.
●頚椎 OPLL を有する場合,他の脊柱靱帯にも高率に骨化を合併する.
●全脊椎に骨化が及ぶような重篤な骨化を示す症例は女性に多い.
BQ 2. OPLLの自然経過(症状,画像,発症様式,外傷の関与,脊髄損傷のリスク)
●自然経過(骨化進展と脊髄症):骨化形態と症状発現は相関する.骨化進展と症状には有意な相関
はない.
●発症リスク:脊髄症の発症には脊柱管前後径が関与する.
●術後骨化進展:椎弓形成術後には骨化巣は進展する.
●外傷の関与:OPLL は骨傷のない頚髄損傷の危険因子である.
第2章 OPLLの病理・病態
BQ 1. 食生活・併存症・力学的要素はOPLLの発生・増大に影響を与えるか
●食生活・併存症・力学的要素は OPLL の発生・増大に関連する可能性が示唆されているが,因果
関係は断定されていない.
BQ 2. 脊髄症発症に影響を与える画像的特徴は
●脊柱管内の骨化占拠率(30~60%以上),有効脊柱管径(6 mm 以下),MRI T2 強調像での髄内高信号が脊髄症の発症に影響を与えている可能性がある.
●脊柱管内の骨化占拠率(30~60%以上),有効脊柱管径(6 mm 以下),MRI T2 強調像での髄内高信号が脊髄症の発症に影響を与えている可能性がある.
BQ 3. OPLLの病理学的特徴は
●骨化の前駆状態として,靱帯肥厚,椎体への靱帯付着部の軟骨細胞増生と靱帯全体での線維芽細胞増生,血管増生がみられる.
●骨化の形式は,軟骨内骨化と結合組織内骨化の 2 種類である.
●骨化の前駆状態として,靱帯肥厚,椎体への靱帯付着部の軟骨細胞増生と靱帯全体での線維芽細胞増生,血管増生がみられる.
●骨化の形式は,軟骨内骨化と結合組織内骨化の 2 種類である.
BQ 4. OPLLに関連する遺伝子・タンパク,バイオマーカーは
● OPLL に関連する遺伝子は存在する.
● OPLL に関連するタンパクが存在する可能性がある.
● OPLL に関連するバイオマーカーとして骨代謝マーカーなどが報告されているが,確定的なこと
はいえない.
第3章 OPLL
BQ 1. OPLLの主な症状・徴候および神経学的特徴は
●OPLL は頚椎,胸椎,腰椎のいずれの部位にも生じうる.
●靱帯骨化の部位,形態,程度は個人差が大きく,靱帯骨化によって生じる臨床症状やその程度も
多様である.
●他覚的所見としては,頚椎・胸椎 OPLL では腱反射の亢進がみられることが多く,腰椎 OPLL で
は下肢腱反射の低下・消失がみられることが多い.
BQ 2. OPLLの画像所見(単純X線,MRI,CT)の特徴は
●単純 X 線による骨化巣の診断が困難な場合は,CT が有用である.
●画像上の脊髄圧迫の程度や MRI での髄内信号変化が脊髄症の重症度と関連するとの報告がある.
●術後髄液漏に関連のある硬膜骨化の診断には,CT での double-layer sign が有用である.
●脊髄の断面積は,頚椎の屈曲,伸展で減少し,屈曲 ‒ 伸展時の脊髄断面積の著しい変化が重症度
と関連する.
BQ 3. MRIの髄内信号変化は手術後の予後予測に有用か
● MRI の髄内信号変化と手術後の予後との関連については,一定の結論にいたっていない.
● MRI の髄内信号変化と手術後の予後との関連については,一定の結論にいたっていない.
第4章 OPLLの治療
BQ 1. 頚胸椎OPLLに対する保存療法は有用か(増悪予防も含め)
●脊髄症や神経根症などの神経症状に対しては,動的因子の除去を目的とした保存療法が有用であ
る可能性がある.
●脊髄症や神経根症などの神経症状に対する薬物療法の効果は明らかでない.
●骨化進展に対して動的因子の除去を目的とした保存療法の効果は明らかでない.
●骨化進展に対しては,ethane-1-hydroxy-1,1-diphosphonate(EHDP)による薬物療法が有用
である可能性がある.ただし,EHDP には OPLL の保存療法としての保険適応はない.
BQ 2. 頚胸椎OPLLに対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは
【頚椎 OPLL に対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは】
【頚椎 OPLL に対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは】
●後方除圧,前方除圧固定ともに JOA スコア改善率 50%程度かそれ以上の平均改善率が報告され
ている.
●骨化の存在のみで脊髄症状のない患者への予防手術が有用というエビデンスはない.
●中等度脊髄症状,進行性の脊髄症状を呈する患者では手術を検討する.
●重度の脊髄障害に対する手術では,術後改善が不良である.
● 40~60%の脊柱管内骨化占拠率,有効脊柱管前後径 8 mm 以下では症状出現のリスクがあり,
注意深い観察が必要である.
【胸椎 OPLL に対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは】
【胸椎 OPLL に対する手術療法の有用性,手術適応,適切なタイミングは】
●胸椎 OPLL に対する手術は,後方除圧固定,後方進入前方除圧,前方除圧固定ともに JOA スコ
ア改善率 50%程度かそれ以上の平均改善率が報告されている.
●胸椎 OPLL の適切な手術タイミングを示唆する報告はない.
BQ 3. 頚胸椎OPLLの予後に影響を与える因子は
[頚椎 OPLL の予後因子]
●患者因子:高齢,糖尿病合併,他部位の狭窄が予後に影響を与える.
●局所,症状因子:長い罹病期間,術前の神経症状,骨化サイズ,MRI での髄内の T2 信号変化,
後弯変形,K-line(-),大きな可動域が予後に影響を与える.
●手術,術後因子:周術期,術後の合併症や除圧不足,骨化進展や再骨化が予後に影響を与える.
[胸椎 OPLL の予後因子]
●術前の神経症状と長い罹病期間,多椎間病変,他高位病変,術前の腹臥位 ‒ 仰臥位テスト(PST),
後方除圧時の固定追加,後弯矯正,脊髄浮上の有無が予後に影響を与える.
BQ 4. 頚椎OPLL手術合併症の頻度,原因,危険因子は
●頚椎 OPLL の主な術後合併症として,神経麻痺(特に上肢麻痺),頚椎可動域制限,術後遺残疼痛
がある.また,前方手術に特有の合併症として,骨癒合不全,移植骨脱転・骨折などがある.その他,
髄液漏,術後血腫,後弯変形,術後骨化進展がある.
BQ 5. 胸椎OPLL手術合併症の頻度,内容,危険因子は
●胸椎 OPLL の手術合併症の頻度は高く,本邦の多施設前向き研究では 51.3%である.
●術中合併症は硬膜損傷,術後合併症は(一過性を含む)下肢運動麻痺が多い.
●術後合併症を生じる関連因子として,画像上の脊髄圧迫程度,術前脊髄症,手術侵襲,術中脊髄
除圧の程度が報告されている.
BQ 6. 頚胸椎OPLL手術において脊髄機能モニタリングは神経合併症予防に有用か
●頚胸椎 OPLL 手術において脊髄機能モニタリングは神経合併症予防に寄与すると思われるが,す
べての神経合併症を検出できないことや,脊髄障害の高度な症例に対する導出率の低さなどの問
題点を解決する必要がある.
BQ 7. 頚胸椎OPLL術後遺残症状に有用な治療法は
●頚胸椎 OPLL の術後遺残症状には痛み・しびれ,運動麻痺,脊髄症の再増悪などがある.
●遺残する運動麻痺(特に下肢機能)およびしびれは患者満足度を低下させる最大の要因である.
BQ 8. 胸椎OPLLで後方法を選択する患者に固定術を追加することは有用か
●生理的後弯を有する胸椎において前方から脊髄が圧迫を受ける胸椎 OPLL では,術後後弯増強や 残存する動的因子による神経障害の悪化を回避するため,後弯が小さい上位胸椎などを除き固定 術を併用することが有用である.
●生理的後弯を有する胸椎において前方から脊髄が圧迫を受ける胸椎 OPLL では,術後後弯増強や 残存する動的因子による神経障害の悪化を回避するため,後弯が小さい上位胸椎などを除き固定 術を併用することが有用である.
BQ 9. 頚椎OPLLに対する術式選択は(前方法と後方法について)
●前方法の手術成績は,50~60%の JOA スコア改善率が得られるという報告が多い.
●後方法では,椎弓形成術後に 40~60%の JOA スコア改善率が得られるという報告が多い.
●前方法と後方法の優劣に関してはいまだ議論の分かれるところであるが,脊柱管内骨化占拠率の
高い OPLL や後弯症例に対しては,椎弓形成術後の症状改善が不良とする報告がある.
CQ 1. 脊柱管内骨化占拠率が高いOPLLや後弯症例に対して前方除圧固定術は推奨されるか
●脊柱管内骨化占拠率の高い OPLL や後弯症例に対して,前方除圧固定術を行うことを提案する.
●ただし合併症発生率,再手術率は前方法で高く,症例に応じた術式選択を行うことが重要である.
Grade C
CQ 2. 頚椎OPLLで後方法を適応する患者に固定術を追加することは有用か
●頚椎 OPLL で後方法を選択する患者に固定術を追加することは,現時点では明確な推奨は困難である.
●ただし,K-line(-)症例や脊柱管内骨化占拠率が高い症例に対しては固定術の追加が有用である可能性がある.
Grade C
第5章 OLF(黄色靱帯骨化症)の疫学・自然経過
BQ 1. OLFの疫学
●本邦の OLF の有病率は CT スクリーニングでは 12~60%である.
● OLF の好発部位は上位胸椎と下位胸椎である.
● OLF には同高位に椎間板ヘルニアや OPLL を併発しやすい.
● OLF は全身的骨化傾向の一部として発生することが多い.
BQ 2. OLFの自然経過
OLF の有病率は年齢とともに上昇している.
● OLF のサイズは高齢者ほど大きい.
第6章 OLFの病理・病態
BQ 1. OLFの発生・増大に影響を与える疾患と力学的要素,食生活の関連は
● OLF 発生に関連する疾患や因子に関して,様々な報告がある.
● OLF 発生・増大と,脊椎への力学的負荷は関連がある.
● OLF の発生症と増大に関連する食生活については報告がなく不明である.
BQ 2. OLFの脊髄症発症に影響を与える画像的特徴は
● OLF の脊髄症発症に影響を与える画像的特徴に関する報告は少数であり明らかでない.
BQ 3. OLFの病理学的特徴は
● OLF の組織学的検討とともに,グリコサミノグリカン,サイトカイン,遺伝子に関する研究報告
がある.
第7章 OLFの診断
BQ 1. OLFの主な症状や神経学的所見・徴候は
●歩行障害,下肢運動・感覚障害,腰痛・下肢痛などが主な症状であるが,いずれも OLF に特異的
な症状ではない.
●神経学的所見・徴候は OLF の神経圧迫高位によって様々である.
BQ 2. OLFの診断において有用な画像検査は
●単純 X 線で OLF の確定診断は困難であるが,DISH や OPLL の有無など鑑別診断には有用である. ●確定診断および脊髄・馬尾の圧迫程度を調べるには MRI および CT が有用である.
●単純 X 線で OLF の確定診断は困難であるが,DISH や OPLL の有無など鑑別診断には有用である. ●確定診断および脊髄・馬尾の圧迫程度を調べるには MRI および CT が有用である.
第8章 OLFの治療
BQ 1. OLFに対する手術療法は有用か(効果,予後,成績不良因子)
●効果:OLF では手術療法によって JOA スコアの改善が得られる.
●成績関連因子:成績関連因子は多因子の相関が示唆されている.しかし,確実に手術成績を予測
可能とする因子は同定されていない.硬膜病変の存在は術後成績,予後に相関するか否かは結論
が出ていない.
●予後:OLF 患者の術後の予後に関する報告はほとんどなく,本症術後の長期予後は不明である.
BQ 2. OLFに対する手術合併症の頻度,原因,危険因子は
● OLF に対する手術の主な合併症としては,硬膜損傷・髄液漏,術後の神経症状の悪化,創部感染,
硬膜外血腫などが報告されている.
CQ 1. OLFに対する除圧固定術は,除圧単独よりも手術成績が良好か
●現在のところ,明確な回答はない.Grade D
●現在のところ,明確な回答はない.Grade D