**専門医試験用、ガイドラインのclinical questionの要約をコピペしてまとめただけの記事です

腰椎椎間板ヘルニア 診療ガイドライン

第1章 疫学・自然経過

Clinical Question  1  

有病率,性差,好発年齢,好発高位はどのようであるか

要 約

Grade C 腰椎椎間板ヘルニアは一般的な疾患であるが,有病率について詳細は十分明らかにはされていない.男女比は約2〜3:1,好発年齢は20〜40歳代,好発高位はL4/5,L5/S1間である.

Clinical Question  2  

腰椎椎間板ヘルニアの発生に影響を及ぼす環境因子は何か

要 約

Grade C 環境因子は椎間板変性の発生要因であるといえるが,ヘルニアの発生要因としてその関与は明らかではない.

Grade C スポーツに関しては,今のところ明らかな関係は認められず,ヘルニアの発生を誘発するとも抑制するともいえない

Clinical Question  3  

自然退縮する腰椎椎間板ヘルニアの画像上の特徴は何か

要 約

Grade B 腰椎椎間板ヘルニアは自然退縮するものがある.ヘルニアのサイズが大きいものや,遊離脱出したもの,MRIでリング状に造影されるものは高率に自然退縮する.

Clinical Question  4  

腰椎椎間板ヘルニアはどのくらいの割合で,どのくらいの期間で退縮するのか

要 約

Grade Ⅰ 腰椎椎間板ヘルニアが自然に退縮する割合およびその時期を明確にした報告はないが,2〜3ヵ月で著明に退縮するヘルニアも少なくない.


第2章 病  態

Clinical Question  1  

高齢者における腰椎椎間板ヘルニアは青壮年と相違があるか

要 約

Grade C 高齢者の腰椎椎間板ヘルニアでは青壮年者に比較して,SLRテストの陽性率が低い.ヘルニアのタイプは脱出型の頻度が多く,組織学的には青壮年と比較して,線維輪や椎体終板の断片を含むことが多い.

Clinical Question  2  

若年性腰椎椎間板ヘルニアは青壮年と相違があるか

要 約

Grade C 若年者の腰椎椎間板ヘルニアではSLRテストが強陽性を示す傾向があり,組織学的には腰椎椎間板ヘルニアに椎体骨端核の離解を伴った症例がしばしば認められる.また,若年性腰椎椎間板ヘルニアの発症には椎間関節の非対称性が関与する可能性がある.

Clinical Question  3  

ヘルニアの大きさは症状の程度に関連するか

要 約

Grade C 腰椎椎間板ヘルニアの大きさは下肢痛や神経症状と相関することが多い.しかし,必ずしも一致するわけではない.

Clinical Question  4  

腰椎椎間板ヘルニア退縮の機序は何か

要 約

Grade C 腰椎椎間板ヘルニアの退縮は,無機質な椎間板に血管新生によって炎症が惹起され,サイトカインの作用でさまざまな酵素が誘導されて腰椎椎間板ヘルニアを分解するために生じる

Clinical Question  5  

腰椎椎間板ヘルニアの発症に遺伝的背景はあるか

要 約

Grade C 腰椎椎間板ヘルニアや椎間板症の発症にはさまざまな背景が寄与しており,遺伝的背景もその1つにあげられる.タイプIX,XIコラーゲンやCILP,ビタミンD受容体の遺伝子多型性の関与が報告されているが,民族間での差異や発症頻度に差があり,今後詳細な検討が望まれる.


第3章 診  断

Clinical Question  1  

診断に必要な問診や病歴は何か

推 奨

Grade B 的確な問診を行うことにより,ヘルニアを疑うことや,ヘルニア高位の推定を行うことは高い確率で可能である.腰椎椎間板ヘルニアの診断に際して,問診や病歴を採取することはきわめて重要である.

Clinical Question  2  

診断における特徴的な所見(理学所見および神経学的所見)は何か

推 奨

Grade B SLRテスト陽性は,腰椎椎間板ヘルニア診断に有用な所見である.神経学的所見として特異的なものはない.

Clinical Question  3  

単純X線写真は腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か

推 奨

Grade C 単純X線写真で腰椎椎間板ヘルニアの描出は不可能である.椎間板高の減少とヘルニア椎間の関係はない.しかし,腫瘍などの骨破壊性病変や脊柱変形でも神経根痛を主訴とすることがあり,他疾患を除外するためにも撮影しておくことが望ましい.

Clinical Question  4  

脊髄造影は腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か

推 奨

Grade B 脊髄造影は,腰椎椎間板ヘルニアの診断には必ずしも必要な検査でない.MRIやCTを使用すれば,省略可能な場合がある.

Clinical Question  5  

椎間板造影は腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要か

推 奨

Grade C 椎間板造影が,腰椎椎間板ヘルニアの診断に必要な検査であることを支持する科学的根拠はない.しかし,ヘルニアの形態,特にヘルニアが後縦靱帯を穿破しているか否かの判定,および外側型腰椎椎間板ヘルニアの診断には,椎間板造影後CT(CTD)が有用である.

Clinical Question  6  

MRIの診断的価値はどの程度か

推 奨

Grade B MRIは,腰椎椎間板ヘルニアの診断にもっとも優れた検査法である.しかし,MRI上,無症候性のヘルニアが存在するのでその解釈にはなお注意を要する.

Clinical Question  8  

電気生理学的検査は障害神経根の同定のために必要か

推 奨

Grade B 電気生理学的検査はヘルニアの診断のためには,必ずしも必要な検査ではない.しかし,障害神経根の同定や,術後の神経機能の評価には有用な検査法である.


第4章 治  療

Clinical Question  1  

腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬注入療法は有効か

推 奨

Grade C 坐骨神経痛を有する腰椎椎間板ヘルニアに対する硬膜外副腎皮質ステロイド薬の注入療法は保存的治療の1つの選択肢として,治療開始早期で疼痛軽減の可能性がある治療法である.

Clinical Question  2  

腰椎椎間板ヘルニアの治療にspinal manipulation は有効か

推 奨

Grade Ⅰ Spinal manipulationが有効か否かを判定するための腰椎椎間板ヘルニアに焦点をあてた十分な科学的根拠を示した研究はない.

Clinical Question  3  

腰椎椎間板ヘルニアの治療において非副腎皮質ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は有効か

要 約

Grade Ⅰ 腰痛に対する非副腎皮質ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の有効性は報告されている.また,腰椎椎間板ヘルニア症例を含む腰痛症例に対するNSAIDsと筋緊張弛緩薬の併用による有効性は示されているが,腰椎椎間板ヘルニアに対するNSAIDs単独による治療効果について十分に示した研究はない.

Clinical Question  4  

腰椎椎間板ヘルニアに対する牽引療法は有効か

要 約

Grade Ⅰ 腰痛に対する牽引療法が有効であるとする報告はあるが,腰椎椎間板ヘルニア症例に限定すると,牽引療法単独による治療効果について十分に示した研究はない.画像と臨床所見から腰椎椎間板ヘルニアと明らかに診断された症例に対して,腰椎牽引療法のみを行うprospective studyがその有効性検討のうえで必要である.

Clinical Question  5  

顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術,内視鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術と通常のヘルニア摘出術の間に,術後結果に関して有意差が存在するか

推 奨

Grade A 通常のヘルニア摘出術と顕微鏡視下ヘルニア摘出術の治療成績は同等である.

Grade B 通常のヘルニア摘出術と内視鏡視下ヘルニア摘出術に臨床上の結果に関しての有意差はない.

Grade C 顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術は術野が明るく鮮明で止血が容易であり,内視鏡視下ヘルニア摘出術は低侵襲であることなど肯定的な報告が多く,否定的な見解はみられない.

Clinical Question  6  

経皮的椎間板摘出術は顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術よりも優れた術式か

推 奨

Grade B 経皮的椎間板摘出術の有効例が多くの報告から70%前後であること,顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術の適応例すべてに適応できないことを考慮すると,顕微鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術よりも総合的に優れた術式とはいえない.

Clinical Question  7  

術式間に成績の差はあるか

要 約

Grade A 椎間板内酵素注入療法(わが国未承認)は手術的治療(ヘルニア摘出術)よりも劣り,さらに経皮的髄核摘出術は酵素注入療法よりも劣っている.

Grade Ⅰ レーザー椎間板蒸散法による報告では,経皮的髄核摘出術と同程度の臨床結果が示されているが,隣接組織への副作用,合併症が多く,また健康保険適用外である点から,推奨すべき術式とはいえない.

Grade Ⅰ 固定術の併用に関しては一定の見解が得られていない.

Clinical Question  8  

腰椎椎間板ヘルニアにおける馬尾障害では緊急手術が必要か

推 奨

Grade A 腰椎椎間板ヘルニアに伴う重症の馬尾症候群では,早期に手術を行うことが望ましい.

Clinical Question  9  

若年者腰椎椎間板ヘルニアに対して手術適応はあるか

推 奨

Grade B 椎間板切除術の長期成績は良好であり,保存的治療に抵抗する症例ではヘルニア摘出術の適応としてよい.

Clinical Question  10 

腰椎椎間板ヘルニア後方摘出術における手技の工夫は瘢痕形成予防や術後臨床症状に関係するか

推 奨

Grade B 遊離脂肪移植は硬膜周囲の瘢痕形成の予防に役立つが,術後臨床症状に対する影響は少ない.

Clinical Question  11 

腰椎椎間板ヘルニア摘出術で術中の硬膜外への副腎皮質ステロイド薬投与は術後経過に影響を及ぼすか

推 奨

Grade B 手術終了直前の硬膜外腔への副腎皮質ステロイド薬注入は術後の機能回復や術後数ヵ月時の疼痛など臨床結果に対する影響は明らかでない.

Grade C 術直後の疼痛抑制にはある程度の効果が期待できる.

Clinical Question  12 

腰椎椎間板ヘルニア摘出術における閉創前の硬膜外へのモルヒネの投与は有効か

要 約

Grade B 閉創前の硬膜外腔へのモルヒネ投与は,術後鎮痛に効果がある.


第5章 予  後

Clinical Question  1  

腰椎椎間板ヘルニア患者のなかでどの程度の患者が手術にいたるか

要 約

Grade B 一定期間以上の保存的治療無効例のうち手術にいたる頻度は,重症度により異なり約2割から5割と幅がある.

Clinical Question  2  

保存的治療と手術的治療による予後の差はあるか

要 約

Grade B 保存的治療と手術的治療を比較すると,臨床症状に関しては手術的治療のほうが長期的にも良好な成績を示すが,10年後にはその差は減少する.

Grade B 数週間疼痛が持続した症例を対象として,保存的治療を継続してみた群と早期に手術をすすめた群とを比較すると,長期的には差が認められない.

Clinical Question  3  

術前の病状のなかで予後を予測できる要因は何か

要 約

Grade B 男性,画像の明瞭な異常所見,罹病期間の短さ,心理状態が正常であること,術前の休職期間が短いこと,労災関連でないことなどが手術成績を向上させる要因となる.

Grade B 再就労をアウトカムとすると,関連する要因は疼痛や日常生活動作とした場合と異なる.

Clinical Question  4  

手術後の後療法の内容により予後が変わるか

要 約

Grade A 腰椎椎間板ヘルニアの初回手術後に活動を低下させる必要はないものの,手術直後から積極的なリハビリテーションプログラムを行う必要性も認められない.

Grade B 術後1ヵ月経過した頃から開始されるリハビリテーションプログラムは,数ヵ月間は機能状態を改善させ,再就労を早くするという強い証拠があるが,1年経過時においては全般改善度において軽い運動と比較し差は認められない.

Grade B 積極的な復職指導は就職率の向上に有効である.

Clinical Question  5  

再手術率と再発率はどの程度か

要 約

Grade B ヘルニア摘出術後の再手術率は5年後で4〜15%である.

Grade C 同一椎間での再手術例を再発ヘルニアとすると,再発率は術後1年で約1%,5年で約5%である.